刺青を消した。
刺青って言っても、昔いたずらしちゃったもの。
中学生の頃、左手の手の甲に墨汁と針を使って
ハートと好きな人の名前を刺青した。
これが刺青といえるものかはわからないけれど、
自分で針を使って模様が出来ていくのはちょっとドキドキして、
なんだか自分が大人になったような気がした。
だけど、年月が経つにつれてそんなドキドキ感は薄れていく。
自分で入れた刺青だから、そんなに綺麗なものじゃなかったし
もちろん、好きな人も変わってしまっていた。
だんだん、その刺青は私にとって 好きなものから嫌悪すべきものに
変わっていってしまった。
この刺青を消したい。
すっとそう思いながら、ばんそうこうを貼って隠していた。
高校2年生になって、私はアルバイトをすることにした。
ファーストフード店でのアルバイト。
毎日楽しく働いていたけれど、ある日店長が私にこういった。
「●●ちゃん、手の甲のケガ?まだ治らないの?」
私は店長に、昔いたずらをして手の甲に刺青を入れてしまったことを
告白した。
すると、店長は私にこういってくれた。
「レーザーで刺青を消す方法があるみたいだよ」と。
私はこの刺青を消すことができるなんて思っていなかったから、
正直びっくりした。
さっそく電話帳で刺青を消すレーザー治療をしている病院を探す。
刺青除去、という言葉をその時に始めて知った。
私が入れた刺青は、小さいものだったから
2万円程度でレーザーで消せるとのこと。
自分で入れた刺青で、肌の薄い部分にしか墨が入っていなかったので
小さな刺青は、あっさりと消えてしまった。
私の嫌悪していた刺青は、今はどこにもない。
だけど、たまにふっと思うことがある。
一生消えないと思っているものでも、消えてしまう物がある。
もう跡形もなく消えてしまった左手の甲を見ながら、
うつろいゆく日々の物悲しさを ガラにもなく考えてしまったりする。

